マジコン問題を理解するための不正競争防止法解説
まず不正競争防止法の目的を理解してください。
不正競争防止法の目的は不正な競争を防止すること「ではありません」
それは手段であって目的は、国民経済の健全な発展です
第一条 この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、 不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
これは、特許法も同様です。
特許法の目的は、発明を保護することではなく、産業の発達です。
第一条 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
どちらの法律も産業を発展させることを目的としていますが、
これらの法律がない場合、産業は発達しないということでしょうか?
いかなる規制も作らない場合
ゲーム機、電化製品、薬などを新規開発し、その製品が大ヒットしたとします。
すると、他の競合他社は新規開発した製品のコピーを作ります。
競合他社は研究開発費が必要ないため、安く作れるようになります。
この状態が続くと、新規開発しても利益を上げられなくなり、
どの企業も新しい技術を開発しなくなります。
他社によるいかなる利用も禁じる場合
では、ゲーム機、電化製品、薬などを新規開発した企業にその製品の販売を独占する永久の権利を与え、
他社の新規参入を永久に規制するようにしてはどうでしょうか?
このような永久の権利を与えると、未来永劫利益を上げ続けられるわけですから、
これでも、企業は新規開発を怠るようになります。
どちらの方法をとっても産業が発達しなくなることが予想されます。
産業を発達させるには
規制が全くない場合も、永久の規制を課す場合も産業は発達しません。
どうすれば、産業が発達するでしょうか?
特許法が採用している方法は、新規に発明した個人・企業に一定期間の独占権を与えるという方法です。
これなら、一定期間は独占できるのでコピーは作られずその期間に利益を上げられ、
永久に独占できるわけでもないので、新たに優れた製品を開発する動機付けになりえます。
コピーを完全に野放しにすること、新規参入を完全に妨害することとの間でバランスを取っていると考えると分かりやすいと思います。
不正競争防止法
不正競争防止法は、産業を発達させるために、商標のコピー、
製品のコピーなどのフリーライドを防止する法律だと理解すると分かりやすいと思います。
不正競争防止法、特許法、著作権法などの知的財産権の枠組みは、
不正なコピーは容認しない、独占する権利は与えるが何らかの形で制限を設ける、
両者のバランスを取ることで産業を発展させるというものです。
ここまでが前提知識です。
よく読んで、理解してください。
chnpkさんの主張は、ユーザーは安い製品を求めるし、コピーをなくすことはできないのだから、
コピーがあることを前提としたビジネスモデルを考える"べき"だ、
裁判で規制してユーザーに不便を強いるビジネスモデルは業界が腐敗し、
海外企業に市場をとられるという主張だと理解しました。
不正競争防止法は、ユーザーがコピーであっても安い製品を求めることは否定していません。
コピー製品の製造・販売・輸入輸出を行う「企業」を排除する法律です。
任天堂はユーザーの倫理を前提としたビジネスモデルを作っているのではなく、
現在の知的財産法の枠組みを逸脱している企業を訴えただけです。
私には、訴えるべきではないという主張も、
海外企業であればコピーを前提としたビジネスモデルを構築できるという主張も意味が分かりません。
http://d.hatena.ne.jp/chnpk/20090302/1235971461
このエントリーへの反論として書きました。